握る男
ひさびさ書店で新書を購入しちゃいました。なぜ、買っちゃったかと言いますと…
この煩いくらいの「帯」が気になってしまったんです。「働く男」だし鮨も好きだしねー、なんて思って買って読んでみたら、熱血鮨小説…ではなく、なんと「ノワール・黒小説」系でした。
この作品は2012年発刊、今年・2015年文庫化ほやほやです。
最初のシーンは主人公の「金森」が刑務所内でもう一人の主人公「ゲソ」こと徳武光一郎の訃報を知ることから始まります。
時代は昭和56年。この年を少し調べてみたら、ピンクレディが解散、「オレたちひょうきん族」がスタートし、ダイアナ妃が結婚し、校内暴力が社会問題になっていた年のようです。まだまだ高度経済成長が続いていた時代ですね。その年に両国のとある鮨屋で主人公二人は出逢い、そして「握る」ことでグイグイと躍進していきます。
さて、表題にもなっている「握る」には色々な意味があるようです。まずは「相手の急所を握る」という事。ゲソは天才的な握りの技に加え、周りの人間の急所を握り、どんどん掌握していきます。兄弟子だった金森もあっという間に手下になってしまいます。「結果を出せればやり方なんてどうでもいいと言い切る」ゲソの手腕はエゲツないけれど、見事なものです。
そして次なる「握り」は食材の流通ルートを握り、その後は他の飲食店も傘下に収めてしまい、最終的にはこの国の外食産業のほとんどを「握る男」になってしまうのです。
ゲソと金森、自分をどちらに例えれば「金森」ですね。もうそろそろ50になる私なので、あと20年は若くないと「ゲソ風」な生き方は選択できません。それもあってちょっと中盤以降 読むペースが落ちてしまいました。
正直言って、高度経済成長からバブル突入、そして崩壊…の時代だからこそ出来た(出来そうな)事でしょう。今の時代でそれを行うことは不可能だと思いますよ。もしやったらかなりの犠牲者が出ることになるでしょうね。
ですが、たぶん漁師や農家との直接取引あたりは現実に行われ始めていると思います。特に海産物は大手・大口がほとんど良いところを確保しているようで、資本による外食産業の格差はこれからもどんどん進んでいくと思います。
第一次産業のこれからの在り方を国と自治体はもっと本気で取り組んでいかなければ…と思うのですが、失策しても責任を取らない・取らなくて良い人たちの仕事ぶりはとても期待は出来ないでしょうね。どこかの民間企業からカリスマが登場する事を祈るしかないのでしょうか?
そして作品中 最も印象的だったのが、二度ほど金森が「鮨を食す」シーン。それが本当に美味しそうでしたね。そして、中盤以降 重かった展開も意外なラストで「ふわっ」とした着地。黒のイメージが最後に少し軽くなったのは良かったと思いますよ。
2015年8月20日 読了 個人的評価:⭐️⭐️⭐️⭐️(ちょっとオマケかな)
そして、全然関係ないのですが…
なかなか視聴率の上がらない「夏ドラマ」をよそに、10月スタートの「秋ドラマ」情報もぼちぼち上がってきていますね。
それに加えて…
そして、「隠蔽捜査4」「探偵の探偵2」の2冊はもうそろそろ読了。このペースだと今月は6冊読破できちゃいそうです。
それでは、また次回。