神威の矢 土方歳三 蝦夷討伐奇譚 (上下)
この作品は2004年に「殺生石」という題名で刊行されたものを改題し文庫化されたもの。
前回の2作とは色合いが違っていて「魔人」やら「陰陽師」やらが登場する伝奇小説です。
登場人物は幕末に公使としてフランス軍人になりすまして来日した「サン・ジェルマン」とその部下「カリオストロ」、和人に虐げられ続けるアイヌ民族とその勇士「タリコナ」、平凡な漁師を捨て軍艦乗りに想いを馳せる「雄吉」、金毛九尾の狐を封じ込めた「殺生石」を守護する陰陽師「安倍泰成」、そして「土方歳三」をはじめとする蝦夷政府の面々などなど。
ストーリーテラーは幕府奥詰医師の「高松凌雲」でしょうか…漁師の「雄吉」以外はほとんどが実在の人物という「富樫流史実」が私の好みにピッタリです。
概略は来日した「魔人」サン・ジェルマンらが、西洋では「黄金のドラゴン」と呼ばれる「金毛九尾の狐」復活の為、榎本武揚などの旧幕府軍をそそのかし蝦夷(現在の北海道)に向かうことに。その船に同乗する雄吉と友の善治。一方 蝦夷では陰陽師 安倍泰成が一人のアイヌ女性に情けをかけ、助けてしまう。そのことが仇となり「金毛九尾の狐」が復活してしまい、土方歳三、アイヌの勇士「タリコナ」、安倍泰成がサン・ジェルマンに最終決戦を挑むという流れですね。
最終決戦の場所は「箱館売ります」に登場した「ガルトネル兄弟」の農場。まぁ なんやかんやで最後は勝利することになり、結末はハッピーエンドです。
最後に最も印象深いのは(作者もあとがきで書いていますが)、和人によるアイヌ民族の虐待、奴隷化のこと。上巻の中盤からの描写はあまりにも酷く、読むスピードが停滞したほど。このことを思うと「従軍慰安婦」なんかも…なんて想像しちゃいます。
こういった 綺麗な(都合のいい)事柄でない「日本人としての黒歴史」も もっと白日の下にさらけ出す必要があるのでは…と思いました。
黒歴史を受け入れ、今後 二度とこういう行いは許さないことこそが、本当の意味での日本再生になると思いますね。(なんか今回は真面目です)
2014年10月31日 読了 個人的評価:⭐️⭐️⭐︎⭐︎☆
10月はなんとか読了ノルマ達成。
そして、最近購入した作品がこちら。あと何作品か追加される模様です。
まぁ ぼちぼちと読んでいきたいと思ってます。
では。